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丁庄の夢―中国エイズ村奇談
出版社/メーカー
河出書房新社
作者
閻 連科
定価
1,680円
Amazon価格
1,680円
発売日
メディア
Book
(2009-01-08 04:21:10 時点)
Amazonユーザーレビュー
心奪われる
凄い本。著者は、世界トップレベルの「圧倒的小説力」で読者を捕らえて離さない。熱く、生々しく、哀しい。読んだ人は自分の死ぬ風景など想像してみたりする。生きるとは、死ぬとは、カネとは、結婚とは、・・・等々、深く考えずにはいられない。とにかく読むべし。
心のエイズ
この物語は死んだ少年によって語られる。貧しい農村で売血がいかに始まりエイズが蔓延していったか、これが丁庄一村に限らないと思うと空恐ろしい。少年の父親は血頭の中でも売血王と呼ばれ、貪欲に私腹を肥やし村人の恨みを買う。少年の祖父は悪辣な息子の行状に心を痛めている。やがてエイズにかかった村人たちは祖父が管理する小学校で共同生活を始める。死を目前にした人々が何を思うのか、それぞれがリアルに描かれている。悲劇ではあるがストーリーが実に面白くて一気に読み終えた。さすが現代の魯迅である。この期に及んでも人は誤魔化し、嫉妬し、愛を求め、欲深い。どの登場人物もしたたかで存在感に溢れている。少年の父親はエイズ患者をとことん利用しつくすが、それは古今東西の権力者のやり口を髣髴とさせる。本書が発禁処分を受けたところを見るとこの小説はかの国の現実に極めて近いのかも。著者インタビューによれば身体のエイズだけではなく人々の心のエイズを描いたとのことである。中国のエイズ問題に関心のある人にも無い人にも十分応える本である。
中国的魔幻現実主義。
読みながら、これはマジックリアリズムそのものじゃないかと思っていた。
ところが、ようよう半分を過ぎようかという頃になって、
これは知られざる中国の真実を暴く内容なのだということに遅まきながら気がついた。
初版十五万部を売り尽くした後に発禁処分となり、
増刷されないことが決定していることからもそのことが窺える。
脱稿して、作者は自分が味わった絶望と苦痛しか読者に与えられないのではないかと不安に襲われたと言う。
果たしてそうか。
泥人間が辺り一面飛び跳ねる最終場面に、微かながらも希望を感じたのはわたしだけではないだろう。
しかしそれも、結局は読み手側の期待に過ぎないのかもしれない。
現実には政府が責任を認め、事態を収拾しない限り何も変わらないのだ。
それは、愚昧な農民たちも同じだ。
目先の欲望に囚われて売血に応じた自分たちの行動の結果なのだ。
これはまた次世代のことを考えずに、目先の快楽だけを求めて行動するどこかの国のことのようにも思える。
「脱貧致富」の大号令に乗せられて心のエイズに罹っているのは誰なのか、いま一度よく考えてみる必要がある。
与えられた情報を鵜呑みにするな。
わたしたちは、もっと知らなくてはならない。隠蔽されている事実を。
聞こえてくる農民の息遣い
「人民に奉仕する」と同一の作者によるものとは思いませんでした。中国の「外面」しか見えない私たちにとってショッキングな内容です。それでも太古から連綿と続く中国農民の日常にどのようにエイズが入り込み、蔓延していったのかが手にとるようにわかり、「政治」にかくされたまま蓋をされている現実を作者がこじあけた衝撃の強さが胸に強くひびきます。同じ村落の共同体の一員でありながら、血頭としてもうけ、果ては公費支給の棺おけ横流しまでした長男と父の相克、加害者と被害者、死に絶えた村の姿とおびただしい土饅頭。中国史でたびたび登場する「農民反乱」がいつおきてもおかしくないような気にさせられました。私にとって2月にして「今年のイチオシ」になる作品でした。
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