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物語は、成人したばかりの仙八が、浪人という身分がいかに世間で肩身が狭く、居場所がないものかという現実を目の当たりにするところから幕が開け、そして厳しい現実に直面した直後に怪しい外道の術をあやつる大濤禅師と出会い、思いもよらぬ人生を歩み始めます。
冷静に考えるとかなりはちゃめちゃな内容で、チャンバラ、仙術、妖術などの非現実的なアクションも随所に登場します。特に物語の導入部ではこうしたアクションが多く、最初は「これはファンタジー小説か?」と疑ってしまいましたが、そこは司馬遼太郎。ただのアクション小説で終わるようなことはなく、読み進めるにつれてむしろこうしたアクションが小説の味を引き立てるスパイスのように活きてきます。
なお、本作品では江戸初期の日本、明国の衰退と清国の勃興に直面する中国を舞台に、司馬遼太郎の人間観察、社会観察眼が特に光っていると思います。個人の心理や社会についての考察を、仙八をはじめ禅師、由比正雪、鄭成功、蘇一官といった作品中に登場する個性豊かな人物たちの言葉を借り、深く、するどく描いています。そうした一言一言にはさまざまな意味・思いが込められており、読んでいてさまざまなことを考えさせ、学ばさせてくれます。
空想と現実という相反するものが共存しており、最初はちょっと拒否反応があるが慣れてくると病みつきになる、という、やや"毒"のある内容だと思います。司馬作品としてはやや異色ですが、司馬ファンであれば間違いなく楽しめる一冊だと思いました。
大司馬遼太郎の著作として異質なので、そういう意味で読む価値はあるように思います。