|
例えば、「分断」とは、競争力があり米国や中国の高需要の恩恵を受ける製造業と、国内消費者の微弱かつ低成長の需要に依存するしかないサービス業(「ポスト近代経済圏」と命名)との間で起きている。2002年からの景気回復で、付加価値生産において、前者が10.4%成長に対して後者は1%成長だ。
その賃金格差は、かつては春闘により微修正されたが、1990年代後半からそれがなくなった。世界と競争する上で、低生産性の水準に足並みを揃えることが難しくなったからだ。フィリップス曲線が2000年以降、フラットになった事実などをもってその主張を補完する。
背景にあるのはポスト近代への構造変化であり、上記の格差是正のためには、サービス業における新ビジネスモデルの構築だと主張する。
そして、中世が近代に移行する段階で「活版印刷技術」と「宗教改革」が起きたように、物質・精神の両面における革新が必要だと言う。IT革命が物質的革新であろうから、求められるのは、宗教改革に匹敵する何らかの精神的革新だということになる。
最後の主張はやや大胆過ぎる感もあるが、そこに至るまでの「市場の統合と分断」という歴史的変化を論じる過程は、冒頭の繰り返しになるが、緻密で、指摘される事実と理論の紹介は非常に為になる。濃厚な内容を、コンパクト(本文231p)にまとめている。
東洋経済のベスト経済書では第2位ということだったが、「似非歴史哲学」風な語り口を評価して投票する「専門家」ってどうなのよ?